2017.10.20 金

昭和のおやつ レシピ探偵

第12話 「焼きリンゴ」

 「一 皿のご馳走」から
  秋たけなわ。果物屋さんやスーパーの果物コーナーが一年でいちばん賑わうこの季節にご紹介したいのは、55年前の焼きリンゴ。昭和37年『暮しの手帖・秋号(66号)』の「一皿のご馳走 5」の中に登場するデザートです。
 「一皿のご馳走」はその前年からスタートし、足かけ5年続いた人気連載。当時大阪グランドホテルの料理長だった常原久彌さんが監修し、毎回一皿(メイン)の料理を中心に数品で献立をたて、そのすべての作り方を紹介していくという内容です。写真をご覧いただくと明らかなように、今の料理ページとは異なり、とても文字が多く、探偵、最初はちょっと気おくれしました。でも読み始めるとなんとおもしろいこと! ぐいぐい引き込まれ、10ページが全然苦ではないのです。
 なぜその取り合わせがいいのか、どこがコツなのか、さらには料理にまつわるウンチク、応用。常原さんが何十年もかけて得た知識や知恵が、平易の見本のような文章からこんこんと湧き出て、読む側をうるおすのです。高度経済成長を背景として食卓が豊かになりつつあった時代とはいえ、そこで紹介しているのはホテルのレストランの西洋料理。でも「作ってみようかな、家族が喜ぶかな」という前向きでやさしい気持ちにさせてくれるのです、55年の時を超えて今も。

 

昭和37年刊行『暮しの手帖 66号』より。全10ページの「一皿のご馳走5」から6ページを抜粋。写真をクリックして拡大すると文章が読めます。焼きリンゴの作り方をまとめたコラムが170ページにあります。

 

光リンゴ、金アミ
 このページを読む楽しさは、それだけではありません。これまで紹介してきた昭和のおやつのレシピと同様に、文章に登場するあれこれが眠っていた記憶を呼びさまし、今に繋がっていきます。
 例えば、使うリンゴの例として登場するリンゴ“国光(こっこう)”は、昭和30年生まれの探偵にはとても親しみのある品種。子供の頃、「“祝”と“国光”と“紅玉”、どれが好き?」「私は“祝”!」といった話を家族や友人と交わした覚えもあります。でも国光は今、ほとんど市場に出回っていません。30歳の若い友人に聞いても知りませんでした。
 またレシピではオーブンを使わず「アルミ箔で包んで金アミで焼く」のですが、金アミも今のキッチンには見当たりませんよね。探偵の実家では5年ほど前まで石油ストーブの上で餅を焼くのに使っていましたが、親の高齢化とともに役割を終了。それが金アミを見た最後です。なので、今回は“国光“と親子関係にある“ふじ”を、オーブントースターで焼くことにしました。


材料一覧

味比べをしようと、リンゴは4種類用意しました。国光系列は「ふじ」(左下)と黄色の「とき」。右下は紅玉系列の「つがる」。小さいのはニュージーランド産「ジャズ」。

 

ルミ箔の包み方
 「一皿のご馳走」ではどんな料理もていねいに紹介している常原さんですが、今回そのていねいさが気になったのが、アルミ箔についての説明でした。
 日本で家庭用の「クッキングホイル」が発売されたのは昭和33年。当初こそデパートなどで実演販売をしてもなかなか売り上げが伸びなかったそうですが、このレシピが掲載された頃にはアルミ箔は主婦たちの人気者になりつつありました。台所事情が様変わりし、使い捨ての気軽さが受ける時代になったのです。当時ホイル包み焼きは、注目の調理法だったのでしょう。だからこそ常原さんは5枚の写真でそのプロセスを紹介。さらに「箔につつんだままテーブルにだすと、なんだろうとおもって、ちょっといいでしょう」と書き添えています。
 2重にして、角を落として、フチは少し上げて。いつもはちゃちゃっとやってしまうホイル包みを写真の通りに作ってみたら、確かにちょっとかわいいパッケージに。焼き汁も一切こぼれず、おいしく仕上げることができました。

熱々もおいしいけれど、探偵は冷ました方が味が落ちついて好きでした。「ふじ」は上品な甘さ、「つがる」「とき」は酸味がいい感じ。添えたのは無糖のエバミルクです。

 

「日 差しはもう強くないでしょうしね」
 焼きリンゴのレシピの最後を、常原さんは次のように締めくくっています。
「そうそう、シナモンシュガーが残ったら、これも使い道があるんですよ。トーストにバタをぬって、この上にこれをかけて、ちょっともう一度火にあぶるんです。「シナモン・トースト」です。(中略)なかなかシナモンの香りがしておいしいですよ。朝よりも、晴れた秋の日曜など、三時のお茶などにいいもんですよ。庭先きも、日差しはもう強くないでしょうしね」。
 「一皿のご馳走」はのちに単行本『一皿の料理』としてまとめられ、出版されています。単行本にする際、雑誌掲載時にあった常原さんの余談が少し減っているのはちょっと残念ですが、それでも大切にしたい本であることに変わりありません。古い『暮しの手帖』はなかなか見ることができませんが、単行本はまだ図書館や古本屋さんで探すことができます。どこかで手にとっていただけたらな、と思います。力強くおしゃれな花森さんのイラストもたくさん使われています。

常原さんの著書『おそうざいふう外国料理』と『一皿の料理』

『一皿の料理』は250ページを超えるハードカバーの大型本です。左は今でもロングセラーを続ける『おそうざいふう 外国料理』(昭和47年)。常原さんはここにもレシピを紹介。本誌の連載「西洋料理はじめから」(昭和42年〜)「日曜日のメニュウ」(昭和49年〜)なども長く担当してくださいました。

 


 さて「昭和のおやつ・レシピ探偵」は今回が最終回となります。1年間のご愛読に感謝いたします。ありがとうございました。



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