花森安治、唯一の自選集
初代編集長・花森安治は、『暮らしの手帖』に数多くの文章を発表しました。
本書は、1958年から1970年にかけて掲載した作品から、
29編を花森が自ら選んでまとめたものです。
「見よぼくら一銭五厘の旗」では、利益至上主義の大企業や、権力を理不尽に行使する政府に対して、強く意義を唱えました。
暮らしを脅かすものがあれば、ペンを武器にして対応しなければならない―――。
確固たる決意を表明した代表作です。
一方、「漢文と天ぷらとピアノと」「千葉のおばさん」「まいどおおきに」などでは、
つつましく生きる市井の人々とその暮らしを、温かな筆致でとらえています。
1972年(第23回)読売文学賞随筆・紀行賞受賞作。
この本の題の「一銭五厘の旗」とは庶民の旗、ぼろ布をつぎはぎした旗なのである。
この本の全部に、その「一銭五厘の旗」を振りかざした著者の正義感があふれている。
正義感ということばは正確ではないかもしれない。しかし、それに代わる適当な言葉が見つからない。
よこしまなもの、横暴なもの、私腹をこやすもの、けじめのつかないもの、
そういう庶民の安らかな暮らしをかき乱すものすべてに対する著者の怒りとでもいったらいいだろうか。
(刊行当時の「毎日新聞」書評より)