2017.08.18 金

昭和のおやつ レシピ探偵

第10話 「なつかしのあずきアイスの作り方」

  ンテコな世の中
 昭和52年刊行『暮しの手帖・Ⅱ世紀 49号』。あずき好きにはたまらない写真につられ、リードを読むと、花森さんの鼻息の荒さに圧倒されます。
 「かき氷とか、氷水といえばすむものを、フラッペなどといってみせるヘンテコな世の中だから、あずきアイスってなんだ、という若い人がいたって、これは仕方がありません。アイスクリームにあずきが入ったのかって? めっそうもない、はばかりながらクリーム気なぞ、これっぽっちもない、正真正銘のアイスです。うまいんだなあ、これが。むかしアイスクリームが十五銭とったとき、こちらはたったの五銭でした。あと味がさっぱりして、口中がべとつかない。夏の宵が浴衣に氷水なら、日ざかりは半シャツ、アッパッパに、あずきアイスがよく似合いました。家で作れて安上がりが身上です」。

凍冷蔵庫の普及
 今読むと、そこまで言わずとも、と感じるけれど、昭和46年にはマクドナルドが東京・銀座に、ミスタードーナツが大阪・箕面に、そして昭和48年サーティワンアイスクリームが目黒にそれぞれ第1号店をオープン。めまぐるしく上書きされていく日本の食事情に、自分の目の黒いうちに警鐘を鳴らしておかねば、と筆が走ったのではないかと思います。 一方当時冷蔵庫の普及率は、全戸に1台。昭和40年代後半からは、冷凍庫付きや大型が販売の主流となっていて(経済企画庁「消費動向調査」より)、一般家庭で「なつかしいアイスを」作れる時代になっていました。

あずきアイスレシピ

昭和52年刊行『暮しの手帖・Ⅱ世紀49号』より。写真をクリックして拡大するとレシピが読めます。左下の写真、ボウルの下に「日東紡のふきん」が見えます!

 

ずきアイスの思い出
 花森さんが「なつかしい」と書いた、クリーム気のないあずきアイスは、大正4年、東京・湯島の老舗甘味処「みつばち」が発祥と言われます。その後全国に広がったのでしょう。東北の地方都市で育った探偵も子どもの頃、和菓子屋さんで最中に詰めてもらうのがとても嬉しかった。全体に薄紫色に染まり、白黒はっきりしたあずき氷と比べると、お上品。名前を「アイス」といったかどうかは記憶にないけれど、花森さんがおっしゃる、“あと味”は今でも鮮明に思い出すことができます。それが家で再現できるなら、やってみたい!


材料一覧

材料はあずき、砂糖、片栗粉。コーンスターチを使うのは、アメリカではポピュラーなレシピ。片栗粉に置き換えたのは、身近な食材だったから?

 

「お よげ! たいやきくん」
 この記事でレシピを紹介しているのは、神戸守一さん。こちらも創業明治42年の老舗、鯛焼き発祥の店として知られる麻布十番の「浪花家(総本店)」の3代目です。当時暮しの手帖社の研究室が東麻布にあったため、神戸さんと鎭子さんとは顔なじみ。取材の際の手土産に鯛焼きを買うことも、よくあったと聞きました。
 浪花家の餡の特徴は甘ったるくなく、塩を効かせて素材の旨みを引き出していること。「この餡で、アイスを作ったらおいしいはず!」と依頼したに違いありません。神戸さんは、昭和50年に大ヒットした「およげ! たいやきくん」のモデルで、その頃は時の人でした。忙しかったでしょうが、「ご近所さんの頼みだ、やりましょう!」と引き受けてくださったのだろうと思います。

全部でたっぷり10スクープ分ぐらいできます。食べる1時間ぐらい前に冷凍庫から出し、一旦かき混ぜておくと、サーブしやすい。

 

栗粉がミソ?
 いつものように、レシピはとても親切です。火加減をレシピ通りに調節、あずきはばっちりおいしく煮えました。ここで既にかなり満足。でも今回の山場はこの後です。実は探偵、果汁や牛乳のシャーベットには何度かチャレンジしたことがあるのですが、毎回最後苦戦するのです。固まる前に何度か撹拌し混ぜ合わせても、最後はカッチカチになってしまう。それが今回は違うかもしれないのです。片栗粉と砂糖で葛湯のようなものを作り、そこに甘く煮たあずきを入れて混ぜ合わせ、凍らせるレシピだからです。
 とろんとしているから、うまくいくんじゃないか? 結果は……結構カッチカチでした。ちょっと目を離すと、やはり固まってしまいます。ただし、果汁だけで作るよりずっとかき出しやすいのは確かで、舌触りはとてもなめらか。心配した糊くささは全くありません。作った甲斐は十分ありました!

 2 017年のかき氷
 花森さんは、この記事が出た翌年、永眠されました。それから半世紀後の平成15年、吉本ばななさんが小説『海のふた』でかき氷屋さんを営む女性を描き、平成23年には女優の蒼井優さんが『今日も かき氷』を出版。
 花森さん、鎭子さん、2017年の今は空前のかき氷ブームを迎え、逆にフラッペは懐かしさを覚える言葉になっています。あずきが若い人に人気です。『暮しの手帖』でもあんこの特集記事を組んでいますよ。美容と健康にもいいそうです。



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